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2018年9月14日金曜日

隻狼 『白猿伝』 SHADOWS DIE TWICE TGS Trailer

※発売前の考察です


前回は日本神話における猿に触れたが、ここでは怪異としての猿について書こうと思う

遠野物語には年を経て異常な力をもった猿の経立(ふつたち)の話がある

猿の経立はよく人に似て、女色を好み里の婦人を盗み去ること多し。松脂を毛に塗り砂をその上につけておる故、毛皮は鎧のごとく鉄砲の弾も通らず。(『遠野物語』青空文庫

さて、猿の怪異は中国古代から、人をさらう山怪として登場する
基本的には、女性をさらい、危害を加えたり子供を生ませたりするが、最後は退治されて終わる、というのが話のパターンとなっている。さらに猿退治に犬が協力することが多い。

隻狼に登場するのは白い猿であるが、中国には『白猿伝』と呼ばれる物語が伝わっている
(岡本綺堂『中国怪奇小説集 白猿伝・其他』)

例によって若い女性をさらい子供を産ませるという異類婚姻譚である
少し異なるのは、『白猿伝』では最後に白猿の子供が生まれるが、この子供は異能の力をもつ特別な存在とされることだ
このように、『白猿伝』における白猿は、かなり神の要素を残していると思われる

また滝沢馬琴の『兎園小説』には、大山十郎なる侍が白猿に先祖伝来の貞宗の刀を盗られる、という話がある
隻狼の大猿が刀を所持(首を貫かれる形で)しているのは、あるいは刀を盗んだからかもしれない


白色

猿退治の物語は多いが、白い色の猿というのは『白猿伝』がもとになっているのではないかと思われる。その話の展開も結末も、日本各地にある猿退治の説話とほぼ同一である

唯一異なる点は、『白猿伝』の猿には神の要素が残っている、ということだろう
時代が下るにつれ、猿の怪異の神性が失われ、やがてただの化け物となっていく
この化け物の極まった形が、酒呑童子の説話であろう(酒に酔わせて殺すところも酷似している)


猿退治の構造

このように、猿退治の物語は基本的にその形が決まっている

1.女性猿の怪異にさらわれる
2.勇士をともない退治に向かう
3.の活躍によって猿は殺される

隻狼にあてはめると、猿は白い大猿であり、犬は隻狼である
さらに女性はあの赤い傘の女性か、まったく登場していない
そして、猿退治のモチーフをあえて採用するのならば、「勇士」が登場するはずであるが、葦名一心かおそらく死んでいる(刀の持ち主)。さらに『白猿伝』を踏襲するのなら、異能の力を有する白猿の子がいるはずである



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