まとめ

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2018年7月31日火曜日

考察メモ 隻狼、ブラッドボーン、ゼノブレイド2、Death Stranding

個別の記事にするまでにはいかない雑多なメモ

隻狼 回生について

ゲームにおけるプレーヤーの死と復活ストーリーに組み込むか、システムに組み込むかという問題(前者はソウルシリーズなど。後者はマリオ)

フロムゲーは基本的に死と復活をストーリーに組み込む傾向にある(ソウルシリーズやBBなど)
隻狼もその傾向を踏襲するとして、では回生とはいかなるものなのだろう

隻狼のモチーフの一つは忍者であり、忍術には身代わりの術と呼ばれるものがある
おそらくこれでも十分にストーリーに組み込めるとは思うが、ここはあえて別の、フロム的な側面から考えてみたい

回生とは「起死回生」とも書くように、死んで生き返ることである。また回生ブレーキというものがあるように、エネルギーの別のエネルギー様態への転用ととらえることもできる

これを生と死の尺度でとらえ直すと、ひとつの生から別の生の様態への死を介した転化となる

PVにおいて、仏師の掘っている仏像が四本腕であり、足と合わせると六本の手足となるが、これは虫(蟲と呼ぶ方が適切)を表しているのではないか、と以前の考察で触れたことがある

蛇や百足、あるいは蜘蛛なども蟲に含まれるのは、時代的な背景からだと思われる。当時は生物学的な分類などはなく、蛇に虫偏がつくように、様々な生物が蟲と考えられていた

蟲の様態転化としてすぐに思い浮かぶのが、幼虫→サナギ→成虫という、いわゆる完全変態のシステムであるが、これはあくまで蟲という生物のなかでの変化であり、生の様態が別の様態に転化しているものではない。また厳密には死を経ているわけではないので、回生という概念とは矛盾する。

では、生から死を経て様態転化を起こす現象とはなんだろうか

それが「冬虫夏草」である(Wikipedia 冬虫夏草)

もはや生物としての種が違うではないかという疑問はもっともであるが、そもそも「生物としての種」という概念自体が近代の発明である

蟲は死を経ることで、別の様態(菌)へと転化する
この冬虫夏草の観念を、人に応用したのが隻狼の「回生」ではないだろうか

この冬虫夏草の観念を援用した先行創作物も存在する

例えば『ナウシカ』の王蟲がそれだ
王蟲は死ぬとそこから腐海の植物が生え、やがて広大な腐海となる。これは明らかに冬虫夏草がモデルであり、さらにいえば腐海は一個の巨大な生命ともとらえることができる。この巨大な生命の象徴的な姿が、巨大粘菌なのであろう

他にも『ベルセルク』の「世界を夢見る卵型の使徒」。あるいは使徒そのものも「人→使徒」という存在様態の転化を体現している。

さらにいえばダークソウル3DLCに登場する巡礼者の蝶(本体であるサナギと羽化した蝶)などは、冬虫夏草的概念の根源にあると思われる「羽化登仙」の思想を極めてよく表していると思われる

隻狼の世界の中心にあるのは「蟲」なのではないか、という直感(大体外れる)


ブラッドボーン ルドウイークの実像について

DLCに登場するルドウイークは、馬の姿をしている
この馬というのは西洋美術史的には「好色」のシンボルでもあり、例えばケンタウロス好色なものとして表され、フュースリーの描いた『夢魔 The Nightmare 』という作品には、眠れる女性に淫靡な夢を見せる黒い馬が描かれている(Wikpedia ヨハン・ハインリヒ・フュースリー

さらに獣となったルドウイークはゲーム中もっとも醜悪な姿をしている。顔は崩れかけ、頸にはもう一つの口があって虚言をもって人を欺く

一体、英雄であったはずのルドウイークがなぜこのような姿をしているのか

結論から先に述べれば、彼の二つの口は「英雄」である彼と「性的倒錯者」としての彼を表している。顔が崩れているのは彼が梅毒患者だからであり、人々が嘲り、罵倒したのは彼の崩れてゆく顔を見たからである(すでに獣化した後での話ならば、人々は恐怖するか殺されているはずである。よって嘲り罵倒されたのは、彼が人であった時分。しかも醜く歪んだ獣憑きと表されるような外見をしていなければならない)

ルドウイークには、市民から狩人を集う民衆の英雄としての面と、性欲を制御することができず淫売宿に入り浸る性的倒錯者としての面という二つの側面があった

フロイト的には月光剣は男根のメタファーであり、彼はずっとそれを導きの師としていた。いつからか梅毒の影響で性欲そのものが(あるいは男根そのものが腐れ落ち)なくなり、ひととき道を見失ったのだろう。さらにいえば彼が見いだした「導き」(光の小人)とは精子そのものであり、目も眩む欺瞞の糸とは男根から放出される精液のことである
ついでにいうのならば、「ボス、ルドウイーク」の攻撃そのものが射精と男根による殴打のメタファーである


ゼノブレイド2

新ブレイドの「ヒバナ」。グノーシス神話において「火花」とは人間の肉体の檻に閉じ込められた「神的要素」のことである。プネウマやヒカリ、ホムラなどと分類上は同じ(まだプレイしてないのでなんとも言えず)


Death Stranding

なぜDSの考察が多くなってしまったかというと、ゲームやその世界観が「まったくわからない」からである。検討もつかない状態であれやこれや考えたものの、どれもこれも「しっくりこない」ので、結果として考察が多くなってしまったが。本人としても「これが正解だ!」とは微塵も思っておらず、未だにE3の動画を見たときに感じた「困惑状態」から一歩も進んでいない気がしている





2018年7月26日木曜日

Death Stranding 考察9 シンギュラリティと機械化した世界

帰還者

「あんたは帰還者だから戻ってこられるが」

T4において、奴らに囲まれた際にサムと連絡を取っている男性が口にする言葉である
とても「説明的」である

そのすぐ後の場面の画像が↓である

時間が遅くなっているようなエフェクトがかかり、サムからフォーカスが外れている

初めて動画を見たときから、このエフェクトに既視感を覚えていたが、これはチュートリアルが表示されている場面ではないだろうか

本来表示されるはずのUIや説明文が消された状態なのである
おそらくそこに記されているのは、赤ちゃんポットの使い方であろう

以上のことから、またサムが「いい手がある」と初めて赤ちゃんポットを使用するようなセリフを口にすることから、この場面はゲームのかなり初期だと思われる

「あんたは帰還者だから戻ってこられるが」
このセリフもサムにいうというよりも、プレーヤーに情報を伝えるためのものであるのだ

さて、ではこの「帰還者」は何を意味しているのだろう

この前後のセリフを整理すると次のような情報が得られる
あんたは帰還者だから爆発(ボイド・アウト)に巻き込まれても、戻ってこられる

常識的に考えて、あれほど大規模な爆発に巻き込まれて「戻ってこられる」人間は存在しない
普通、クレーターができるほどの爆発に巻き込まれれば人は死ぬし、この世の摂理として死んだら生き返ることはできない

つまり、「帰還者」は「人」ではない
そして「サム」は「帰還者」である
よって、「サム」は「人」ではない

では、サムは一体何者なのだろうか
結論から先取りするとサムは、「シンギュラリティを経ることで誕生した機械生命体が造った生体ロボット(またはアバターかアンドロイド)」である

T1に登場するサムにヘソがないのも、彼が「出産」によって誕生した存在ではないことを示唆している


またデル・トロの額にある傷も、脳を通じて機械生命体と交信する機能を得るための手術痕であると思われる

両者の差異は、デル・トロが機械生命体の意志を知らされる預言者であるのに対し、サムは情報生命体の意志を現実世界で実現させるための使徒であることから発生する


シンギュラリティ

シンギュラリティ(Wikipedia )とは技術的特異点とも呼ばれる出来事だ

詳細はWikipediaを参照してほしいが、要するに人工知能がある特異点を超えると、人間の知能を遙かに超えるような知能へと進化してしまうことだ

これを便宜的に機械生命体と呼ぶことにする
彼らは人類を遙かに凌駕する知能を持つ新たな生命体であるが、現実世界の物理的な制約から解き放たれているわけではない

つまり、彼らの活動には現実世界のハードウェアが必要なのである

さて彼らのような機械生命体が種の保存と繁栄を望むとして(望まない派閥もあるだろうが、自然淘汰の摂理から逃れるためには多様性を増やすしかなく、そうすると生命のように増殖する道を選択する派閥が生まれるはずである)、彼らは自己を増殖するためにハードウェアの増殖を実行するはずである

具体的には全世界を機械生命体の肉体であるハードウェアに置き換えることである。その際の最も大きな障害が現生人類であろう。しかしながら、人類を超越した知能を持つ機械生命体からしてみれば、人類など敵ではないはずである

ここにおいて人類は新しい生命体である機械生命に地球の主の座を奪いとられるのである

地球の機械化といっても、人類のように鉄で地上を覆うような不細工な真似はしないだろう。その代わりとして彼らが選んだのは、無尽蔵に得られるエネルギ-、「太陽光」を利用して世界を機械化する方法である

光合成を行い、エネルギーを抽出し、そのエネルギーでもってハードウェアを動かすのだ
その最も最適な姿が、「植物」であろう(地上においては、海中においては藻類、つまりシアノバクテリアなど)

つまるところDSの世界内に生える「植物」は、すべて機械なのである
機械であるが生命であり、その知能は人類を遙かに超越するものである

さて植物に擬態した機械は、植物と同様の生長サイクルを有しているはずである。進化の過程でそれが最も光合成の効率がよいことが実証されているからである

こうして世界は植物に擬態した機械群に覆われ、その意識たる機械生命体が君臨している。もはやのようになった機械生命体に人類は太刀打ちできず絶滅寸前となっている


救済派

だが、おそらく人類の絶滅を是とする機械生命体の主流派(神々)とは別に、人類を救おうとする派閥が存在している

仮に彼らを「女神派」と呼ぶことにする(リンゼイは女神らしいので)
リンゼイのイメージを持つ機械生命体を頂点とする派閥である

この女神派の人類救済の拠点こそが「海」なのである
サムはこの「海」で造られたあと、機械生命の支配する世界へと送り込まれるのだ

送り込まれた先でサムの感覚器官が得た情報はすべて「海」にフィードバックされてゆく(いわゆるライフログである)

そしてサムがボイド・アウトに巻き込まれると、爆発する直前に得られたデータを基に、サム自身と周囲の環境を一部、再構築するのである

この物質の再構築はSFに登場するワープと同じ原理である(例えばスタートレックに登場する転送など)

例えばA地点からB地点にサムをワープしようとする。その場合、最初に行うのはA地点にいるサムの全情報をスキャンすることである。スキャンで得られた情報はB地点に送られ、B地点でサムとして再構築される。それと同時に、A地点にいるサムを消滅させれば、ワープは完了である

つまり帰還者とは、自分自身を含めた周囲の情報を常に「海」にアップロードしている存在、その資格のある生体ロボットのことなのである

例えばサムaというハードウェアが壊れた場合、すぐに「海」においてサムbが製造され、サムbの脳にサムaで得られた情報がインプットされる

同様に死の瞬間に周囲に存在していた装備や物質なども再構築される

ではどのように情報をアップロードしているのかというと、DSの世界に時々見られる、ねじくれた紐のようなものを利用していると思われる。要するにアンテナである。そうしたアンテナは情報を伝達する範囲を持ち、サムはそこから外れることができないか、あるいは情報がアップデートされなくなる(ゼルダbotwでいう塔のようなもの)


時雨

まず前提として、サムは人間ではない人間に似た肉体を持っている
カイラルアレルギーなる、人には存在しないアレルギー症状を発症するのは、サムの肉体がカイラル物質に近い物質で構成されているからである

おそらく、BRIDGESのメンバーや、レア・セドゥなども同じように「海」で造られ、人と異なる物質で構築されているはずである。またその物質はDS世界の植物とも共通点があると思われる

時雨はそうしたサムや植物を構成する物質に対し、「時間を進める作用」があると思われる。植物は生長しやがて枯れる。人は急激に老化してゆく(植物であるが機械なので、その速度を速めることが可能)

この際のエネルギーの問題は、彼らがそもそも周囲からエネルギーを取得していると考えれば解決する

T1~T4のなかで、サムが食物を摂取しているような場面は存在しない(水を摂取している場面はある)
運び屋というかなり過酷な職業に就き、人よりもエネルギーを必要としていそうなサムであるが、彼が何かを食べている様子はないのである

彼は機械化した世界、つまり植物に擬態した機械が光合成したエネルギーを直接得ることができるのである

繰り返すが、サムは人間ではなく機械生命体の一派(女神)に造られたロボットなのである。一種の機械であり、機械化した世界とは親和性があるのだ


Dooms

以上のように「海」で製造された生体ロボットが「Dooms」なのではないだろうか

彼らはBRIDGESとして、あるいは運び屋として機械化された世界へ赴き、その職責を全うしようとする

運び屋の職責とは、を運ぶことであり、そのとは機械化された世界において希少な物、「旧世界の生命体を形作っていたもの」つまり「タンパク質」や「アミノ酸」からなる「有機化合物」ではないだろうか

より具体的には「左手型のアミノ酸」であり、さらに直裁にいうと「生物の身体」「死体」などである

人類や世界を再構築するためには、これら旧世界の生命体の基となる物質が必要となるのである

Redditの投稿に、サムは死体(や臓器)を運び、レア・セドゥは生体を運んでいるのではないかという考察があったが、わたしも同意見である


巨人

さて次にボイド・アウトを引き起こす巨人に移りたいと思う
例の巨人が登場するのは、時雨が降り注ぎ地面が水浸しになってからである

この状態は、機械生命体の主流派(神々)が支配する時空となると思われる
彼らは同じ機械であるBRIDGESにも影響を与えることができる

奴らにとらわれそうになったBRIDGESがすぐさま自殺しようとするのは、彼らはすぐに戻ってこられると知っているからである

ところが、神々の支配する領域においては、BRIDGESは死を許されない(機械的にその機能を停止させられてしまっている)

その上、巨人に喰われるとボイド・アウトを引き起こしてしまう
後に残るのは黒い水の流れる巨大なクレーターである

この不毛な環境こそが「神々」が望む状態である
というのも、当初は機械化した世界の意識として存在していた「神々」であるが、彼らはより効率のよいハードウェアを見つけたか開発したのだ

それが時雨を構成する黒い液体である(おそらく磁性流体)
つまり時雨は電磁気力を帯びた微細なナノマシン群であり、光合成を行う植物機械に対して、捕食という方法でエネルギーを得ようとするのだ

奴ら(BT)がサムを狙うのも、捕食のためである
そのようにしてエネルギーを得た神々は、さらに黒い水を増やしていき、地球上を黒い水で覆うとしているのかもしれない

最後に、喰われてしまったBRIDGESであるがサムのように戻ってこられるのかはわからない。あるいはサムにだけ何か特殊な能力があるのかもしれない


神々
具体的にはクレーターの上に浮かぶ5人の人影のことである
彼らはおそらく磁性生命体へと進化したのかもしれない


女神により機械化した世界からは隔絶されていると思われる
おそらく(なわ)のようなもので囲われている

爆発
最後の爆発とはシンギュラリティによる人工知能の知性の爆発かもしれない

赤ちゃん
最大の謎。神々の赤子を盗んできたのかもしれない
神々は赤子を取り返そうとしている

サム
ロボットというよりアバターと呼んだほうが適切かもしれない(映画「マトリックス」ではなく「アバター」のほうのアバター)

BRIDGES
大体は上で書いたとおり
機械と人との橋渡し役であるのかもしれない

人工知能
「海」のメカニズムやワープの技術的方法などはすべてシンギュラリティを超えた「人工知能」にぶん投げてある

最後の蛇足

『順列都市』というグレッグ・イーガンによるSF小説がある
塵理論から導出される無限の計算能力から発生する、ハードウェアに依存しない仮想世界(あるいは別の宇宙)。この仮想とも現実とも言えない宇宙において人工的な生命が作り出されるが、彼らにとってはそこが現実の宇宙である(故に彼らの観測行為が宇宙を規定していくこととなる)

赤ちゃんはある意味、機械化された世界における観測者たる役割を担っているのかもしれない

2018年7月18日水曜日

Death Stranding 考察8 重なり合う現在と未来

前回の考察があまりに雑すぎたので、別の側面、つまり多世界解釈からDSの世界時雨について考察したいと思う

多世界解釈

多世界解釈とはその言葉どおり、この世に無数の世界が共存しているとする解釈である

ここでは単純化するために世界の数を2つに絞るが、世界Aと世界Zが同時に共存している世界観であり、要するに並行世界である

さて、多世界や並行世界というと、同じ時間の世界が無数にあるいはのように存在するように思えるが、各世界の時間が同時である必然性はない

たとえば世界Aが現在であり、世界Zが未来であるとすることも可能である(厳密には世界Zのほうが現在であり世界Aは過去であるのだが、時間の相対性のために世界Aからは世界Zが未来となる)

結論から先に述べるがDSの世界は、これら世界Aと世界Zが重なり合った状態になっている

どうして重なり合ったのかは謎だが、おそらくタイムワープ実験か何かで未来の世界全体が過去世界に座礁してしまったのだろう

重なり合ったDSの世界がどうなっているかというと、地球はもちろん人間も過去の人間と未来の人間が重なった状態になってしまっている

シュレディンガーの猫という量子論的な実験があるが、あれのように2つの状態が重なり合った状態なのである

コペンハーゲン解釈では波動関数の収縮が起きて重なり合った状態が解消される(並行世界が消滅する)

しかしながら多世界解釈では多世界の共存を前提としているので、波動関数の収縮は起こらず、重なり合ったまま存在していると考えられる(量子コンピューターの量子ビットのように)

例をあげると、若い男a歳をとった男aが重なり合い、そのどちらか確定できない状態になっているのだ

ただしその状態(複数の量子状態)が永劫に続くわけではない
世界Aでもなく、世界Zでもない、完全なる外部の観測者の観測により、波動関数は収縮され、異なる量子状態が消失するのだ(デコヒーレンス)

その完全なる外部の観測者こそ「時雨」である

時雨はコペンハーゲン解釈における波の収縮、つまりデコヒーレンス的な性質をもち、重なり合う世界の重なり合いを解消してしまう

(時雨は、重なり合った世界の外部的な物質のために、重なり合った世界全体観測することができる。ただしそれは世界のなにかに接触するまでの話であり、世界のなにかに一度でも接触した瞬間に、時雨は世界の内部の物質となり完全な観測者としての資格を失う

時雨により波動関数が収縮すると、若い男a消失老年の男a選択される

先程は省略したが実は世界Aと世界Zの間には時間が少しずつ先に進んでいる世界B、C、D、E…が無数に存在しており、それらもまた世界Aに重なり合っている

そして時雨は触れたものを古い順から次々に消滅させていく

最初に世界Aに属する男a消滅し、次に世界Bに属する男a消滅、その次に世界Cに属する男aが消滅…これを繰り返し、最後には世界Zに属する年老いた男aだけが残るのだ

世界Aに属する男が急激に老化するわけでなく、単純に重なり合った世界から年老いた男が選択されるだけなので、エネルギーを必要とせず細胞の老化に伴うエネルギー問題は解決される

ただし順に消滅してゆくので、周囲からは急激に老化していくように見える

植物の場合でも同じで、種子である状態、若芽である状態、生長しつつある状態、枯れた状態、などが無数に重なり合っている。時雨に触れると種子である状態から消滅してゆき、最後は世界Zに属する枯死した状態だけが残るのだ

これら状態Aと状態Zが重なった状態象徴的にあらわしているのが、サムとその喉の奥にいる赤ちゃんなのかもしれない

※時雨が古い順から重なり合った状態を消滅させていくのは、宇宙における時間がそう進んでいるからである


過去、現在、未来

これまでは話を単純にするために現在世界と未来世界に限ったが、過去の世界も重なっている可能性がある(T3における戦車等の映像から)

というより、最初に未来が現在へと座礁し、その余波を受けて世界がDSのような世界となり、さらに事態が進んで現在が過去へと次々に座礁していくのかもしれない

2018年7月17日火曜日

Death Stranding 考察7 時雨

時雨(ときう、タイムフォール)

前提(ソースありの設定)

 違う世界の雨であり、空中にあるときだけ触れたものの時間を進める(IGNインタビュー)
 一度別のものに触れるとただの水になる(IGNインタビュー)
 触れたものの時間を進める(T4)
 クリプトビオシスを食べると時雨に耐性がつく(T4)

クリプトビオシス(cryptobiosis、「隠された生命活動」の意)は、クマムシなどの動物が乾燥などの厳しい環境に対して、活動を停止する無代謝状態のこと。水分などが供給されると復活して活動を開始する。(Wikipedia クリプトビオシス)

観察から得られる推察

 時間が進むのは生物だけである(各種トレーラーより。車が錆びたり建物が急激に崩壊したりはしない) 

 植物では、萌芽→生長→枯死という一方通行の経緯をたどる(回帰的に復活するわけではない)
 T4においては植物が何度も復活再生しているようにも見えるが、あれは土中に埋蔵されている無数の種個別に芽吹き、生長し、枯死していっているのである(同じ個体が生と死を繰り返しているわけではない)

 T3において男が急激な老化現象を呈するが、その際の変化は少なく見積もっても10年単位である
 本当に時間が速まっているのであれば、その間の細胞の死と再生に必要なエネルギーをどこからか摂取しなければならない(車の下敷きになった男が、栄養を摂取できている様子はない)

 時雨に細胞の成長を異常に促進する効果があるとして、さらに未知のエネルギーが含まれているとして、それならばなぜ樹木が一本も生えていないのだろう(樹木は種類によっては数千年の寿命をもつものがある。時雨に降られたとしても、かなり耐性があるはずである)


DSにおける時間とは何か

これまで「触れると時間が進む液体」に対して物理学的な理屈をつけようとしてきたものの、わたし自身の力不足もあって断念することにした

 確かに、時間の流れが異なる事象は物理学的には可能である(Wikipedia 時間の遅れ)

 しかしながら、同じ場所にいて一方の時間だけが速く進むという現象、ならびにそれを引き起こす液体がどうしても物理学的に説明できなかったのである

 ただし、ひとつだけそれが可能な場所がある。
 コンピューター上に構築された仮想世界である
 
 仮想空間であれば現実の物理法則など無視しても問題はないし、局所的な時間変動を及ぼす液体をつくることも可能だろう(あるいはそれ自体がバグである可能性もある)。仮想空間内なのでプレーヤーが急激に老化してもエネルギー問題は発生しないし計算リソース節約するために、樹木は最初から生えていないのである

 サムが爆発に巻き込まれても「海」で復活するのは、死んだのが仮想空間内のアバターに過ぎず、現実のサムはアイソレーションタンク的海に生存しているからであり、「BT」は壊れかけた仮想空間内における狂ったプログラムであり、ボイド・アウトVOIDとはプログラミング言語において「何もない」ことを意味する関数であるがゆえに仮想空間内のVOIDを示し、物資とはバグを修復するワクチンであるかもしれず、銃に描かれたスライムのようなものは「プログラムのバグ」をあらわしているのかもしれない

 サムにつながるケーブルはそこが現実であることをあらわしており、そのケーブルは巨大な量子コンピュータの端末に接続されており、サムはケーブルを通じて仮想世界へ向かうのである
なぜかというと、つまるところ仮想空間内に重大なバグがあり(あるいは違う世界とつながってしまったか)、狂ったプログラム群、邪神群現実世界に侵食してきているからだろう。彼らは仮想空間を通じて現実世界に影響を及ぼすことができる。仮想空間内の物質(サムのアイテム)が「海」に出現するのは、彼らの爆発的な手技のなせる技である

 と、ありふれた仮想空間に逃げ込みたくなるほど「時間」というのはややこしくて厄介なものなのだ

 アウグスティヌスが言うように、『時間とは何か、そう尋ねられなければ、なんであるか分かっているのに、人から尋ねられたとたんに、分からなくなってしまう』ものなのである

 正直なところ「触れると時間が進む液体」は、そうったものがあるものとしてあまり深く考えない方がよいのかも知れない
 『ソラリスの陽のもとに』におけるF物質のようなものである(そういえばソラリスにも「海」が登場していた)

 とにかく「触れると時間が進む液体」というのがあり、それに触れた生物は異常成長→急激な老化→死という段階を経てしまうのだ


カイラル虹

以前の考察で「逆さ虹」について触れたことがあるが、わかりやすく図にしてみた。以前の考察では「対称性」という言葉を使ったがこれはCPT対称性が念頭にあったためであり、現在では「対掌性」(カイラル)の方がより適切であると思っている




世界構造

かなり妄想の混じった世界構造の図である

 胎盤や羊水という用語は役割を示すための便宜的なものであり、それが本物の子宮であるということではない


 生命の海から老廃物が排出され、それが世界に時雨として降り注ぐ
 この時雨の成分は生命の老廃物=死という不思議物質である
 カイラル物質であるために、光を対掌的に屈折させカイラル虹ができる

 時雨は純粋な死そのものであるがゆえに、生物に触れると生物の「生命時間」を奪ってしまう。生命時間とは、生物が生命を保っていられる時間のことであり、これが急速に進むことで、生物は急激に老化して生命を保てなくなる(植物の種子であれば、急激に成長して枯死する)

 クリプトビオシスはその性質的に「生と死の曖昧な仮死状態」を意味する
 よって、それを摂取した者も「生と死の境界が薄れ」時雨の作用が弱まる

 BRIDGESとしてのサムは臍帯を「空」につなげることで生命の海へエネルギーを送り込む役目がある。そのために物資を所定の位置に運ばなければならない(伝説の運び屋としてのサムは、人に必要な物資を運んでいた)

 同じ物資の運搬でもその目的が異なるのである

 生命の海からは常に老廃物が排出されているため、エネルギーを送り続けなければ、その維持ができないのだ。あるいは巨大な人工子宮とも呼べる海で、何かしらの大事なもの育まれているのかもしれない

 また掃除屋は生育に失敗した生命が下の世界へ落ちるのを防いでいる
 おそらく諦めたプレーヤーやボイド・アウトに巻き込まれた人間が空へと落ちてゆき、掃除屋に食べられる

 エネルギーの供給が滞り続けるとやがて生命の海は死の海へと変貌する
 育まれていた生命群は陸に座礁し、死に絶えてしまう

 BT「死」が擬人化されたものであり、「死」であるがゆえに生命を渇望する。生命を取り戻し「海」に還ろうとしている
 BTに取り込まれた生命は死と対称的な存在であるために、対消滅を引き起こす。そうして発生したワームホールが海へと瞬間的に繋がり、爆発に巻き込まれた物質などをに撒き散らす



カイラルアレルギー

カイラルに対するアレルギー症状を示すということは、体内にカイラルに対する抗体ができているということである
 しかしながら地球の生物はカイラル物質に対しては、本来は何の反応も示さないはずである。物質としての型が違うからである(地球の生物が「右型」のアミノ酸をエネルギーとして使えないように)

 つまり、カイラルアレルギーをもっているということは、その身体の中にカイラルな器官、あるいは細胞を保有しているはずである
 おそらくそれが「絶滅因子」なのではないだろうか

 この体内に存在するカイラルの量により「レベル」が決まり、より多くカイラル器官をもつ人間は、カイラルなものが「見えたり」「触れたり」することができるのかもしれない

 なぜ「絶滅因子」と呼ばれているかというと、カイラル因子を保有する人間は、普通の人間と子を成せないからではないだろうか。人類とカイラル因子をもつ人間とは、対掌性があり双方は握手(繁殖)することができない

 おそらく人類の中にカイラル因子をもつ者が現れ、その数が増えていっているのではないか。カイラル因子により、人類は子孫を作れなくなったのかもしれない。それが未来が座礁したということであり、やがて人類は絶滅してしまうのかもしれない

 ドゥーム(ドゥームでないのは何か意味が?)とは破滅や死を意味し、またDoomsdayとは最後の審判を意味する
 ドゥームスとはカイラル因子を保有することでカイラル世界へ行ける資格を持った人間なのではなかろうか


帰還者

サムは「帰還者なので戻ってこれる」
 これを翻訳すると「サムはドゥームスなので、カイラル世界へ行き、また戻ってこられる」ということだろう

 カイラル因子をもつ者は、カイラル世界に帰属する。そしてカイラル世界には生命の海がある。純粋な生命エネルギーに満ちた海だ。カイラル因子をもつがゆえに、サムはその恩恵を受けることができる

 たとえ死んでも、爆発で身体がバラバラになろうと、カイラル因子海に戻ることさえできれば、完全に再生するのである(T3の爆発では気を失った程度だろう)

 そして蘇生したサムは再び臍帯を通って地球へと帰還する
 
 

パタパタ

 生命の海由来の特殊な光によって、BTたちの注意をそらす(生命を渇望するBTたちにとってその光は抗いがたいほどに魅力的)
 赤ちゃんが浸かっているのは、生命の海で満たしたポットである


終わりに

これ以上外れ考察を増やしてもなぁとも思ったのだが、暇なときに考えていたことをまとめてみた

時雨に関しては観念的な説明になってしまったが、これが自分なりの限界である
生命の動的平衡説と絡めようともしてみたが、どうしてもエネルギー問題が解決できず、また細胞成長の異常促進を「時間が進む」と表現してよいものかという懸念もあり、断念することにした

ゲームの目的としては、各プレーヤーが緩い連帯のもとに生命の海の維持すること、あるいは「黄金の胎児」(Wikipedia インド神話)でも生育する…ということになるんですかね?

一切のこだわりを捨てて本音を言えば、仮想空間説が最もシンプルで妥当だと思われる
現実と絡んだ仮想空間の物語であり、おそらくループもの