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2018年6月1日金曜日

Death Stranding 考察3 「PORTER」と核の冬 ※2018/06/05 Sorrowsの綴りを訂正



クトゥルフ神話であるとか、エジプト神話であるとか、の写真から舞台がアイスランドではないかという推測が出ているDeath Strandingであるが、ここではウィリアム・ブレイクとの関係から考察してみようと思う

ウィリアム・ブレイクといえば、PV第一弾の冒頭にその詩が引用されていた詩人だ
PVで引用されていたのは「無垢の予兆」と呼ばれるブレイクの代表作ともいえる詩の最初の四行である

対訳 ブレイク詩集』の解説によると「ブレイクの神秘思想を説明するのによく用いられる最初の四行」だという

ブレイクの時代(18世紀~19世紀頃)といえばロマン主義の全盛期であり、詩人や作家が各々の神秘思想を体系化することがよく行われていた

ブレイクにも彼独特の神話体系があり、その神話は『ティリエル』『セルの書』『アルビヨンの娘たち』と題された幻想詩の三部作として構想されていたという

このうちの『セルの書』から、その第四章引用してみたいと思う


The eternal gates’terrific porter lifted the northern bar:
永遠の門の恐ろしい門番北の閂(かんぬき)を 持ち上げた。

Thel enter’d in & saw the secrets of the land unknown.
セルは中に入り、未知の国の秘密を 見た。

She saw the couches of the dead, & where the fibrous roots Of every heart on earth infixes deep its restless twists:
彼女は死人の床(とこ)を見、そこに地上の死者のあらゆる心臓の 繊維状の根が 絶えずよじれて地中深くに張っているのを 見た。

A land of sorrows & of tears where never smile was seen.
そこは決して微笑みの見られない悲しみの国
(『対訳 ブレイク詩集』松島正一編 岩波文庫から引用)


ここでporterは「永遠の門の恐ろしい門番」として登場する
さらに解説によるとネオ・プラトニズムにおいて、「porter」とは冥界を司る神プルートを指すという(ブレイクの「預言書』体系ではロスという名前らしい)

その門番が北の閂を持ち上げ、セルを未知の国へと誘う

イギリスの詩人であるブレイクにとって、イギリスの北にある未知の国はどこにあたるかというと、地理的に「アイスランド」しかない

その未知の国において、セルが見たのは「死人の床」と、「地上の死者のあらゆる心臓の 繊維状の根が 絶えずよじれて地中深くに張っている」光景である

捻じくれた黒いヒモのようなものが垂れ下がるPVを彷彿とさせる光景

なぜ地中に深く張っている根をセルが見られたかというと、そこが地下にある冥界だからである

その冥界は決して微笑みの見られない、悲しみ涙の国であるという
世界に顕現したマッツが微笑み、冥界に降りたノーマンがを流すのは、以上の理由からかもしれない。また涙(tears)の前に悲しみ(sorrows)があるのは意味深だ(ソローと言えばMSGをプレイした人ならわかるだろう)


ここで話は変わるが、プルートといえば、かのプルトニウムの語源の語源である(冥界の神プルート→冥王星→プルトニウム)
プルトニウムといえばご存知のように、核兵器の原料である

つまり「Porter」から「核兵器」は連想ゲーム的につながっているのだ

軍事に明るい人間が、あえてブレイクを引用し、さらにPorterという単語を用いたからには、当然この繋がりは想定されているはずである

おそらくPorterには2つの意味が込められている
冥界に属する者としてのPorterと、プルトニウムのPorterである

前者はノーマンの立場をあらわしていると考えられる

PV2においてデル・トロ監督は「BRIDGES」のバッチをつけており、それはPV第三弾のオレンジ色の防護服を着た男たちにも受け継がれている

だがノーマンだけは肩と太ももにPORTERと記された防護服を着用しているのである


このことから、ノーマンは冥界と繋がりがあり、かつ冥界の門を司るような立場にいると考えられる

では、冥界とは何か

核戦争が行われると「核の冬(wikipedia)」と呼ばれる現象が起きるという説がある

核爆発やその火災により舞い上がった灰や塵によって日光が遮られた結果、地球は「氷河期」のような環境になるという

いわば全世界極北の「アイスランド的」な環境になるのだ
この状況が冥界である

つまり、「アイスランドの苔」は舞台がアイスランドであることを示すというより、氷河期の地球がどのような環境になるのかをシミュレートしようとした際に、ロケーションの似ているアイスランドが採用されたと考えられるのだ


要約すると、Death Strandingの舞台はアポカリプス後核の冬が訪れた地球である(BRIDGES北米大陸マークから、おそらくアメリカではないだろうか)

極寒の環境において人類は衰退し、各々のコミュニティは分断されてしまっている(UNITED CITIES OF AMERICA)。その分断されたコミュニティを繋ごうとするのが「BRIDEGES(複数形の橋)」という組織なのかもしれない

また大規模な核戦争は膨大な量の放射線を発生させる
この放射線によって人間の遺伝子が変異破壊されることはFalloutシリーズでもおなじみである

PVに女性が一人も登場しないのは、正常な子供を産める個体が極めて希少だからなのかもしれない
人類という種の滅亡を防ぐために男性による出産技術が確立され、それがノーマンに施されたのかもしれない
さらに言えば、その実験的な繁殖法がノーマンを特殊な存在へと変異させたのかもしれない(この段落は単なる憶測であってE3までの暇つぶし以外の何物でもない

もしかすると昨日発表されたFallout76と舞台がかぶるかもしれない
だがおそらくDeath Strandingはより異質だろうと思われる

小島監督がアメリカの映画やドラマが大好きなことを考えると、
ゲーム・オブ・スローンズ(冬来たる Winter Is Coming)とウォーキング・デッド(コミュニティの分断)をかけ合わせ
さらにそこにKAIJU(怪獣)をぶち込み、ミストやイットといったクトゥルフ要素の有る映画という香辛料をふりかけて煮込んだような料理であるかもしれない

ゲーム自体はPVの印象よりも現実的なものであるだろう(映画版のミストに似てる気がする)

1 件のコメント:

  1. 面白い❗️文章もとても読みやすかったです👍
    初めて知ったことばかりで、素晴らしい考察だと思います。

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